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「もしもし。オレだけど。」

「もしもし?どなたでしょう?」

「オレだよ。オレオレ。」

「え?どなた?」

「オレ、ガンダム。」

「ガンダム。」

「そうそう。オレ、ガンダム。」

「…」

「…」

「どうしたの?こんな遅い時間に。」

「いやぁまぁ、なんていうか…」

「何かあったの?」

「いや、その、急にお婆ちゃんの声が聞きたくなったっていうか。」

「なんだいそりゃ。気持ち悪いねぇ。」

「…気持ち、悪いかな…」

「…」

「…」

「…うれしいよ。」

「え?」

「うれしいって言ったんだよ。わたしもお前の声、ひさしぶりに聞けて。」

「…へへ。」

「元気なのかい?」

「あー。元気元気。」

「なら、いいよ。」

「そっちはどうなんだよ。」

「実は…貯金がね。」

「貯金がどうしたんだよ。」

「1000万円ほどあるんだけど。」

「自慢かよ。」

「その1000万円は使わないようにしてるんだけど。」

「うん。」

「使わないってことは、無いってことと、同じなんじゃないかって最近思ってて。」

「どういうこと?」

「金ってのはさ。」

「うん。」

「使った瞬間にはじめて金になるんじゃないかって、思うのよ。わたし。

「うーん。」

「使うまではただの紙切れで。」

「まぁ、そりゃそうだけど。」

「だから、1000万円貯金してるけど、実はそんな貯金は無いんじゃないかって思うのよ。」

「うーん。よく分かんないなぁ。」

「要するに、金は使わないと、意味がないのよ。」

「じゃあ使えばいいじゃん。」

「だから言ってるでしょ。この1000万円は使っちゃだめなの。」

「じゃあどうしようもないね。」

「だからね…。」

「なんだよ?」

「だから、こういうサービスがないかしらって、最近よく思うのよ。」

「どういうサービス?」

「つまり…。脳のある部位に電流を流してね。」

「電流?」

「そう。電流。それで脳に刺激を与えて錯覚させるの。」

「錯覚。」

「わたしはお金を使った、とか、払ったとか、そういう錯覚。もちろん本当は何も支払ってないんだけども。」

「うーん。」

「そういう "支払った感" だけが本人の中に残るようにするっていう。」

「…」

「そういう錯覚を人工的に作り出すっていう。」

「…」

「そういうサービス。」

「…」

「それさえあれば、今の貯金を切り崩すことなく、1000万円を使った気分になれるじゃない?」

「そうだね。」

「そうなってはじめて私は、1000万円の実在性を信じられるんじゃないかって。」

「うん。」

「そう、思うのよ。」

「うーん。」

「まあ、そんなサービス、無いか。」

「そうだね。」

「…」

「…」

「それじゃ。」

「ああ。」

「またね。」

「またな。」

プツッ…

オレは電話を切って、そしてホワイトベースを飛び出した。
この戦争を、終わらせるために。
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